2024年1月末から 2月初旬に、福岡・大阪・東京で開催された展示会「SUBU 2024 EXHIBITION」
今季のコレクションが並ぶ展示会のすぐ隣で企画写真展「物物交換」は同時開催されました。なぜこのような取り組みをスタートしたのか、そもそもどのような取り組みなのか。
SUBU のブランドディレクターである府川さんにお話をお伺いしました。
展示会で実施していた企画写真展「物物交換」ですが、どのような取組で、何故スタートしましたか?
8年ほど単独展示会という形でSUBUの新作発表を行っているのですが、プロダクトの展示以外にも楽しんでもらえることはないかなと思って、スタートしました。
シンプルに、SUBUの価値を「お金」以外で計るとしたら・・・そこに興味がありました。
もしもお金が世の中に無かったら皆さん、SUBUを何と交換してくれるのか。色々な方と、そんなお話ができたら嬉しいな、と思っています。
キーワードは「あなたらしいもの」ですよね?
その人なりの価値観を「あなたらしいもの」で表現してほしいです。
住職さんや小学生、カップル、アーティストなど年齢・職業・性別が異なるさまざまな方にご協力いただきましたが、「持っている物」以外にも、ご自身なりに提供できる「サービスや体験」と交換をしてくださる方もいました。
ド正面から何かとSUBUを交換してください。ってお願いすると、その人の「生き方や考え方」や「いま感じていること」などが自ずと見えてきて、それぞれの個性のようなものが見えてきますね。
着なくなったTシャツとの交換もひとつですし、そこに制約はないので。
会場にはいろいろなモノが集まっていました。一部にはなってしまいますが、ご紹介いただけますか。
まずひとつ目は「ぬいぐるみ」です。
これは、フリースクールに通う小学校三年生の女の子が、交換してくれたものです。
さまざまな理由からいまはフリースクールに通っているのですが、幼い頃からずっと大切にしていて、彼女にとっては「宝物であり、相棒のような存在」です。年齢的にも、ファッションやお洒落に興味を持ち始める時期ということもあって、SUBUを渡すと、すごく喜んでくれました。
おもちゃを手放し、新たな自分を見つけていく “きっかけ” や “過程” を目の当たりにした気がしました。
ふたつ目は「ドンペンサンダル」です。
こちらは、自称 “永遠のサッカー少年” の方と交換しました。秋葉原のメイドカフェに通っていて「推しの子とのチェキ写真」もオマケでくれました。
突然、お声がけさせていただいたのにも関わらず、2時間ほど、お話もしてくれました。笑
最後は「梵字」と「般若心経」です。亀戸東覚寺の住職さんと交換しました。
住職さんというお仕事ならではで、SUBUを梵字で写経してくださったり、お客様やSUBUに関わるすべての方のご多幸を祈念して、般若心経を説いてテープで吹きこんでくださいました。
これは「物物交換」ならぬ「仏々交換」ですね、笑。
ありがとうございます。ご来場いただいた方のリアクションなどは、いかがでしたか?
とても興味深く、皆さんに、見ていただけました。
展示会なので、バイヤーの方やプレスの方が来られるのですが、そういった方たちを “いい意味” で裏切ることが出来ました。視点や思考を、スイッチさせるようなプレゼンテーションになったかな、と思っています。
素直に驚いて楽しんでくださる方もいれば、自分だったら何と交換しようと、考えてくださったり、それぞれが違うリアクションだったので、とても面白かったです。
会場を、「物々交換の企画写真展スペース」と「今年のコレクションを見ていただくプロダクト展示スペース」の大きく2つに分けていて、物物交換スペースを案内してから、今年のコレクションを見ていただく、という順番も良かったと思います。
モノと価格の関係性を考え直す「きっかけ」を提示できたのは、狙い通りでした。
お金を介さない物物交換の傍で、プロダクトを販売して流通させるための展示会が行われている。そのコントラストが面白かったですね。
そうですね。ここ最近「お金・価格」に対して、個人的に興味があります。
ここ最近、日本社会全般として円安などの影響で、価格が上がっています。素材や品質、縫い子さんの工賃などは何も変わっていなくても、為替の影響で価格が上がってしまっている。
もちろん、大きな仕組みとして致し方ないことかもしれませんが、プロダクトの製造販売をする立場としては常に、「販売価格とその価値」には誠実に、向き合っていきたいと思っています。
あとは、その一方で、もっと「協力しあう社会のあり方」にも興味があります。
私は、ネギをつくります。
私は、豆腐をつくります。
私は、味噌をつくります。
私は、器をつくります。
私は、火を焚きます。
みんなが力を合わせれば、お味噌汁が出来上がり。
それぞれが役割を持って生きて、売り買いせずに協力して力を合わせることで、何かが完成して、そこに価値が生まれることって、純粋にいいな〜って思いますね。
今後もこうしたプレゼンテーションは続けて、投げかけは続くのかもしれませんが、今後この取り組みの中でチャレンジしてみたいこと・トライしてみたいことは、ありますか?
同じプレゼンテーションを、5大陸でやってみたいです!!!
できるだけ生活環境が違う方々、SUBUを知らない方々、と物々交換をしてみたいですね。ご協力いただける方、ボランティア募集中です、笑!
最後に・・・こういった形で、製造販売とは異なる “あらたな循環(リサイクルでもない、新しいサイクル)” がブランドとして見つけられると面白いですね。
ちょっと「物欲」について考えたいと思います。「物を欲する心」とどう向き合うか。
この取り組みは、僕自身の “思考の整理過程” です。
価値の整理
所持品の整理
能力の整理
お金の整理
この「モノを交換する」以外に、僕には何ができるだろうか・・・と考えたり、何に対してお金を払うべきなのか、と向き合ってみたり。5,000円あれば、色々なモノやコトを買うことできるので、その消費行動にいま一度、向き合ってみたいなと思いました。
また、レジ袋有料化のタイミングで、エコバッグの販売がすごく増えましたが、その時に「青山ファーマーズマーケット」さんでは「使わなくなったエコバッグを入れて、誰かのエコバッグと交換できる」ということに取り組んでいました。
社会の動きを逆手に取るようで、でも合理的で。
大きな木箱に投げ入れて、違うものと交換していく。長く使っていると飽きてしまったり、新しいものが欲しいとか、必ず生まれてくる「欲求」をうまくクリアできる素晴らしい取組だと思いました。
「物欲、物を欲する心」と向き合うヒントがあるように思いました。
WORD by gooth.inc
連載企画[SUBU25]とは・・・2020年を皮切りにスタートした連載企画。
この世に[SUBU]が誕生して5年が経ったその節目の年に、これからの「5年間」を見据えていくために活動開始。これまでの「5年間」を振り返りながら、これからの「5年間」に、どう繋げていくか、をこの活動を通じて、見定めます。
その一方、「トゥーゴー」という読み方には、[SUBU]と一緒に出かける、という意味も。単純に[SUBU]を履いて街に出かける、というのもそう、こうして、お話をしたことのない方の元へ出向く、というのもそう。もっと言うと、新しいコトへ、一歩踏み出して、チャレンジする、という意味も。これからこの連載企画を通じて、[SUBU]がさらに、魅力的なブランドへと成長していくことを期待して、活動していきます。
2020.12.28 連載企画[SUBU25]がスタート | 前編 / 連載企画[SUBU25]がスタート | 後編
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